愛の雫

「希咲ちゃん、大丈夫?」


心配そうに訊きながら控室に入って来たのは、奈緒ちゃんだった。


「奈緒ちゃん……」


彼女の顔を見た瞬間、まだ強張ったままだった体の力がほんの少しだけ抜けた気がした。


「殴られたんだね……」


奈緒ちゃんはあたしの体を包み込むように抱き締めた後、小さく呟いてからゆっくりと離れた。


「少し腫れてるから、冷やした方がイイよ……」


苦しげに眉を寄せている彼女が、あたしの左頬に氷の入った袋をそっと当ててくれた。