「希咲、遅いよぉ〜!何回もカウンターの人に言ったのに、全然来てくれないんだもん!」


奥のソファーに座っている絵里香が、唇を尖らせながらあたしを見た。


“この状況”を彼女に尋ねようとしても、喉元が苦しくて声が出ない。


どう……して……?


あまりにも驚き過ぎて、心の中で呟いた言葉ですら途切れ途切れになってしまった。


必死に冷静さを取り戻そうとしているのに、手の震えが止まらない。


自分の表情が引き攣っているのは、鏡を見なくてもわかった。