愛の雫

「希咲、出掛けるの?」


「バイトがあるから……」


凪兄に訊かれた時、それだけ答えるのがやっとだった。


たかが普通の会話なのに…


凪兄を見る事も、いつもみたいに話す事も出来ない。


「あたし、行くね……」


彼にも奈緒ちゃんにもあたしが感じている気まずさに気付かれたくなくて、少ない言葉だけで告げた。


「うん、行ってらっしゃい!あたし、後で遊びに行くね!」


踵を返そうとしたあたしは、彼女の言葉に目を見開きながら足を止めた。