愛の雫

さっきまでの沈黙した空気よりも、今の空間の方がずっと居心地が悪い。


「てか、今はそんな話してないし……。とにかくこれからは“希咲”でイイから。じゃあ、バイトだから……」


あたしは早口で言った後、逃げるようにさっさと踵を返した。


「あっ……!今日は本当にありがとう!バイト、頑張ってねっ!!」


後ろから飛んで来た朋子の言葉を背中に受けて、いつもよりも足早に歩く。


オレンジ色の夕陽と冷たい向かい風を全身に浴びながら、とにかくバイト先へと急いだ。