愛の雫

数秒の沈黙の後、乃依さんが口を開いた。


「希咲ちゃん……」


あたしを呼んだ彼女の声が、すごく悲しそうに聞こえる。


それは乃依さんが本当に悲しいと思っているからなのか、痛みを感じているあたしの心がそうさせたのか…


今の自分(アタシ)には、もうよくわからなかった。


だけど…


どちらにしても、乃依さんの声で益々胸が苦しくなった事には違いない。


「そんな顔しないで下さい……」


何とか小さな笑みを浮かべたあたしは、そのまま続けた。