愛の雫

また声を出してしまえば、きっと凪兄を傷付ける言葉しか出て来ない。


その事をわかっていたあたしは、マグカップに残ったカラメルミルクに視線を落としながら、ゆっくりと口を開いた。


「帰る……」


喉から振り絞った声は、静まり返った部屋に零れ落ちた。


バッグを持ってリビングを出たあたしの事を、凪兄が慌てたように追い掛けて来る。


「希咲っ!!」


呼び止められても振り返らなかったのは、顔を見られたくなかったから…。


それなのに…