愛の雫

「希咲……」


不意に凪兄に呼ばれて、心臓がトクンと高鳴った。


聞き慣れたハズの声が、やけに低く聞こえる。


凪兄に“男”を感じている自分に、戸惑いを隠せなかったけど…


「……何?」


出来るだけ平静を装って、いつものようにぶっきらぼうな口調で訊いた。


すると、凪兄は眉を寄せて微笑みながら口を開いた。


「この間は、ごめんな……」


「へ……?」


凪兄の言葉の意味がわからなくて、思わず小首を傾げてしまった。