愛の雫

乃依さんはすぐに受話器を取って、笑顔で対応を始めた。


あたしはそんな彼女の姿を見ながら、固まってしまっていた。


“イイ子”……?


そんな言葉、もう何年も言われていない気がする。


最後にそんな風に言って貰ったのは、確かママが亡くなる少し前だった。


『希咲は、本当に優しくてイイ子だね』


優しくそう言ってくれたママは、もうすっかり体力が失くなっていて…


見せてくれた笑顔に力は無かったけど、すごく優しくて穏やかな顔をしていた。