「……希咲、何か怒ってる?」


改札口を抜けた時、凪兄が眉をしかめながら訊いた。


「別に……」


機嫌が悪いのは、事実。


だけど…


何に対して不機嫌なのかは自分でもわからなかったし、『怒っている』って言う表現も何だか相応しくない気がして、曖昧に答える事しか出来なかった。


凪兄はそんなあたしを見ながら、困ったように微笑んでいたかと思うと…


「あっ……!」


突然ハッとしたような表情を見せながら、小さな声を漏らした。