愛の雫

「何よ、いきなり……」


やっとの思いで発した言葉は、夜の闇の中にスッと消えた。


冷たい風があたしの体に纏わり付くように流れていくから、素肌がチクチクと痛む。


この状況に緊張している気がするのは、どうしてなんだろう…。


沈黙を破る事が出来ないあたしが黙り込んでいると、凪兄が眉を寄せながら息を小さく吐いた。


「心配なんだよ、希咲の事が……」


いつもよりも低い声で紡がれたその言葉は、あたしの心の奥底を撫でるようにゆっくりと落ちていった。