愛の雫

「……希咲」


不意に足を止めた凪兄に呼ばれ、少し先で立ち止まった。


無視する事も出来なくて芽生えた苛立ちに蓋をして振り返ると、彼は真剣な表情であたしを見つめていた。


その瞳があまりにも真っ直ぐで、金縛りみたいに動けなくなってしまう。


しばらく黙っていた凪兄が、ゆっくりと口を開いた。


「危ない事だけは絶対にしない、って約束してくれないか?」


「え……?」


突然の言葉に戸惑って、凪兄から視線を逸らす事すら出来なかった。