愛の雫

歩きながら夜空を仰ぐと、雲一つ無い空に満月が光っていた。


陰(カゲ)りの無い綺麗な空を見ていると、夏よりも冬の夜空の方が月や星が綺麗に見えるって、いつか誰かに教えて貰った事を思い出して…


思わず足を止めて、空に浮かぶ満月に見入ってしまった。


ひんやりとした風が、頬や足を撫でるように吹く。


寒さに首を竦めながらも、しばらく立ち止まっていると…


「希咲?」


後ろから聞き慣れた優しい声に呼ばれて、思わず目を見開きながら振り返った。