バトンクッキー



「このデータを参考にして勝負したのか?」

 おれは水原に視線を向ける。


「はい、すいません」


「いや、謝ることじゃないんだが……レフトとサードに守備を置かず、変化球を投げてこなかったのは、このノートがあったからなんだな」


「すいません」

 水原はひたすら謝る。


「ゴリとの対戦のとき、苦手なコースを教えてやろうとしたらフェアプレーに反すると言っていたが、すでに苦手なコースを知ってたんだな」


「叱らないであげてください。無理やり見せたのはボクです」

 小柄な男子は庇う素振りを見せたが、口元は緩んでいた。