「なんだって?」
おれの声はソプラノ歌手のように上擦る。
どういうことなんだ?と目でサインを送ると、水原はメガネをかけた小柄な男子の後ろで必死に頭を下げる。
「でも、岩宮野球部には多大なる貢献はできると確信しています」
小柄な男子はずり落ちかかったメガネを片手で持ち上げながら言った。
「もっと具体的に説明してもらえると有難いんだがな」
「2週間前に水原と野球部が対決したときに、水原に凱歌があがったのは、私の影の力があってこそなんです」
鼻に付く自慢話をして、小柄な男子は片手に持っていたキャンパスノートを差し出す。



