バトンクッキー



「片方が背番号1をつけて、もう片方は先発するっていうのはどうだ?」

 ゴリが苦し紛れの妥協案を提示する。


「エースを譲りますよ。レフトとサードがいない状況でノーヒットに抑えるなんてこと、ぼくには無理です」

 原西はヘルメットを脱ぎながらこっちに向かってくる。


 寂しげな表情ですぐにでも野球部を退部したいという顔つきだ。


「あのぉ~ぼくは背番号1なんていらないし、9回まで投げる自信がないです」

 水原がおれたちの顔を探るように見て言った。