いよいよ勝負が始まったが、水原はなかなか投げない。
まず、プレートのついている土をホウキで掃くみたいにグローブで丁寧に払い除け、自分で買ってきたであろうロージンをお尻のポケットから出してポンポンと弾きながら手の甲と手のひらに交互につけていく。
意外と様になっている。
「おい、早くしろよ、1年!」
柿谷がバッターボックスを外す。
脅されても水原は涼しい顔で微笑みを返す。
焦らそうという作戦なのかもしれない。
やっと振りかぶり、水原は第一球目を投げたのが、15秒後。
柿谷は様子を見るためか、平然と見送り、ボールはインコース低目ギリギリに決まった。



