水原は涼しい顔でおれの顔を見て、原西は視線を逸らせた。
「わかった。やろう」
おれがそう言うと水原はグローブを持って小走りでグラウンドに向かう。
原西は“えっ、どうして?”というショックを隠しきれない様子。
おれが水原の我がままを受け入れたのは、原西がエースの座を奪われるかもしれないという現実から逃げようとしているように感じたからだ。
これが切っ掛けになって危機感を持ち、少しでも成長してくれたらと願うばかりだ。
「落ち込むなよ。結果はすぐに出る」
おれはボォーと突っ立っている原西の肩に手をのせて、フォローも忘れなかった。
キャプテンって面倒くせぇな、と思いながら。



