「決めるのはおれだ。原西に言ってもなんにもならないぞ」
うちの野球部の顧問は野球の“や”の字も知らない科学の教師。
メンバーや練習メニューなどを決めるのがキャプテンの務め。
3年前に軟式の同好会から硬式に格上げされたばかりだから学校側の期待はゼロ。
「お願いします。ヒット1本でも打たれたら諦めます」
水原はおれに近づいて頭を下げた。
「おれは誰がピッチャーをやるとかやらないとかで、チーム内にいざこざが起こるのは嫌なんだ。だからポジジョンは前もって固定してあるんだ」
おれはキャプテンに無理やりさせられたときの交換条件を思い出し、水原に八つ当たりした。



