バトンクッキー



「いいか、とにかく粘って辛抱強くチャンスを待つんだ」


「ハイ!」

 おれの形式的になりつつある指示にも反応は良い。


 ベンチに戻ったとき、三浦が真っ先に謝ってきた。


「すいません。サインを出すのを迷ったり、6番の選手のデータも不十分だったり、点を取られたのはぼくの責任です」

 水原を庇うというより、自らに反省を促していることが伝わってきた。


「あの湯上谷という選手は春季大会に出ていなかったんだし、ここ数日で調子を上げてきたから監督も起用してきたに違いない。しょうがないさ」

 おれは三浦を宥めた。