3球目、水原は右腿を高く上げ、いつもの腕の振りでアウトコース低目を丁寧につく。
そうだ、困ったときは配球の基本でもあるアウトコース低目の出し入れで十分だ。
マウンドをきれいにする儀式を済ませた水原はストライクを立て続けに取り、長いようで短かった4回裏の攻撃を三振で締めた。
プロ野球でも一発を浴びたその後にガタガタッと崩れるピッチャーはいるが、水原は気持ちを切り替えることに自分自身の工夫で成功した。
「ナイスピッチング!」
「いいぞ、水原」
ベンチ前で輪になったナインの表情にまだ暗さはない。
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