「き、来てます……い、いや、こっちを見てます」 三浦の声は震えている。 「なにが来てるんだ?」 おれは平静を装う。 「男の人と犬が右中間方向のフェンスから10メートル離れたところで見ています」 「本当か?」 おれは言われた方向に顔を向けた。 外野フェンスの向こう側は、大きな葉を茂らせたつる草がはびこる元牧草地。 昔は牛がのんびりと放牧されていたらしいが、牧場が廃業してから緑の荒地の状態が続いている。 小学生ならすっぽり隠れてしまいそうな背が高くて細い茎の草が生い茂り、野放しのまま。