バトンクッキー



「どうしたんですか?」


「いや、なんでもない。さぁ~練習再開だ。春の大会の雪辱しようぜ」

 おれは空に向かって拳を突き上げるという過剰な演技で、嫌な雰囲気を一掃しようとした。


「そのポーズはなんですか、クククッ……」


「クサすぎですよ」


「キャプテン最高!」

 苦笑い、ひき笑い、腹を抱える者、反応は様々だが、暗くなりかけたムードにならずにすんだ。


 水原と三浦の二人以外は……。


 なんとかしないと……。


 二人を納得させる“なにか”をおれは考えていた。