バトンクッキー



「いいえ、そんなことはありません。今日の練習で犬を連れた男の人が見学していたら……」


「幽霊だったら捕まえられない」

 三浦は途中で話すのをやめ、水原が中略して言葉を続けた。


「おまえら本気で幽霊がこの世に存在すると思ってるのか?」と尋ねたとき、練習用ユニフォームのボタンを掛け間違えた。


「キャプテンも、もしかしたらと思いはじめているんじゃないですか?」

 三浦はおれのうっかりミスを見過ごさない。


「くだらない話しに気をとられていたんだよ」

 今度はミスるなよと念じながらボタンを掛け直す。

 動揺しているなどと思われてはいけない。