「水原は中学のとき、野球部に入ってなかったようなんだが、その理由を知ってるか?」と、おれが質問すると、三浦は視線を逸らした。


「あまりペラペラと水原のことを喋るのは……」

 三浦は口ごもる。


「おれは不思議なんだよ。あれだけの球を投げられるのにどうして野球部に入らなかったのか」


「毎日“コンドラ”に向かって投げているだけで満足していたんだと思います」


「それは信じられないな。水原の潔癖症が野球部に入らない障害になっていたんじゃないのか?」

 おれは水原の異常ともいえるきれい好きに疑問を抱いていた。

 本人に聞けば傷つけてしまうことも考えられるし、身近な人物が現れたら前々から訊いてみたかった。