「ボールの真ん中からやや下を叩けば打球が上がることは物理的にも明確な事実です。ピッチャーの投げたボールは上と下に気圧の差が出て、後ろにいく力と、その逆の前にいく二つの力に分断されています。そこへボールのやや下をバットでスイングして押し込み、気圧を加えてやれば重力に逆らった浮力でバックスピンがかかり、打球が伸びるという現象が起るんです」
「理屈は……なんとなくわかったが、フライを打つ練習とちょっと結びつかない気がするけどな」
坂本は納得できずにいる。
「これはボールのやや下にバットを合わせるクセをつけ、ボールにバックスピンをかける練習です。マウンドからピッチャーが投げる球と、近くからトスをする球とでは違いはありますが、感覚的に打ち上げるくらいがちょうどいいんです」



