柳沢はバットを拾い、トントンと肩を叩くとなにかを考えている素振りをしてから「わかった」と、とりあえず納得した。 フリーバッティングは再開されたが、柳沢が構え、三浦が凧糸を引っ張り、打とうとしてもタイミングが合わずにボールを見送るというシーンが繰り返された。 「ぼくが凧糸を引っ張ったときの“タメ”を忘れずに打ってみてください」 原西が柳沢に10球目を投げ終わったとき、凧糸をバットから解き、ようやくスイングするGOサインが出た。 「タメ……だな」 「はい」