「柳沢さんはバットを動かしながら構えてますが、なかなか直らないんでしょ?」
三浦が尋ねるその後ろで水原が頭を下げ、柳沢の気持ちを静めようとしている。
「キャップテンに言われて努力はしたけど、無理だったよ」
水原が視界に入っていたらしく、柳沢はぶっきら棒ではあるが言葉を交わす。
「バットの先端を揺らすのはしょうがないとして、グリップも動かすのはいただけません。打つときに自分のイメージと違うところをスイングすることになります」
「自分ではグリップを動かしている意識はないんだ」
「グリップを動かさないようにボクが凧糸で引っ張るので、しばらくバットは振らないでタイミングを掴む工夫をしてください」



