行く先に大きな木が見えた。
 まるで視界を塞ぐかのごとくそびえ立つ大きな、大きな木。
 その木の周りを回るように歩いていくと――いきなり視界は開けた。

 私の視界に飛び込んできたのは夕陽で真っ赤に染まった……まるでこの世のものとは思えないほどの美しさを持った『花畑』だった。

「うわー!」

 思わず感歎の声を上げる。

――これが……これが見せたかったものなの?

 いくら呼びかけても返事はない、私の中にいるはずの『もう一人の私』に問いかける。
 当然のように何の返答も無い。
 でも――なぜ『もう一人の私』がこの場所にくる『約束』をさせたのかが少し納得できたような気がした。