見えないお姫さま



「なっ、何言ってるのよ!」

「いってぇ!」


私はそんな自分を誤魔化すように、ヴァンの肩を思いっきり叩いた。


「わ、訳分かんない…」

「アイリ」

「見えないものはしょうがないじゃない」

「アイリ」

「さーて、今日もアイリスにお水をあげなくちゃ」

「アイリ!」


それは偶然なのか何なのか。

ヴァンの根性なのかは知らないけれど。


私はヴァンに抱きしめられてた。



「…離して」

「何でだよ…」


ダメなの。

分かってよ…。


「離してほしかったらお前が俺を突き飛ばせよ」


ずるい…。

私にそんな事出来る訳ないじゃない。

離してって言っただけで精一杯なのに。

さっきから心臓がドキドキとうるさいのに。