だけど反対にも思う。

このまま片思いで終わった方がいい。

変に両思いにでもなったら、きっと辛い未来が待っている。

お兄様の二の舞を踏む事になる。

お父様は何を考えるか分からないから。


だから、このままがいいのよ。

私のこの恋心が消えて無くなればいいのよ…。



「はぁ…」


アイリスの花の前で私は小さく溜め息を吐いた。

するとヴァンが近付いて来る。


「綺麗に咲いたな」

「そうね」

「うわっ!」


ヴァンは大きな声を出して“びっくり”って顔をする。


「どうしたの?」

「いやごめん。居ると思わなかった」

「あぁ」

「駄目だな俺。アイリとこうやって話すようになってから結構経つのに、未だにアイリが居るか分かんねえ」


そう言ってヴァンは今度は眉毛を下げて落ち込んだ。


「仕方がないわよ。見えないんだもの」

「でも俺、嫌なんだよ」

「え?」

「アイリが居る事すら分かんねえ自分がムカつく」

「……」



そんな事を言われたら期待してしまう。

期待した心臓がドキドキと鳴る。