「アイリ様。レッスン再開しますよ」
窓から中庭を見ていると、後ろから声が聞こえた。
そうだった。
私は今ピアノのレッスンの途中で休憩していたんだわ。
「もう少しー」
「駄目です。はい!窓閉めて」
この人は言わばピアノの先生。
スチュアート。
三十代男性。妻子あり。
ピアノの腕はこの国一らしい。
でも融通の聞かないところがあってそこが嫌い。
てゆうか先生は大体皆嫌い。
私は仕方がなく窓を閉めてピアノの前に座った。
「では、先程の続きから参りましょう」
「どこからだったかしら?」
そう言うとスチュアートから溜め息が漏れた。
「ここです。ここのページの始めから」
「はいはい」
私の音が彼の所にも届いているかしら。
そんな事を考えながらピアノを弾き始めた。

