見えないお姫さま




にやけた顔を意味もなく掌(テノヒラ)で覆った。


「だから違うの。それにもう元気になったから大丈夫。約束は守るわ、何でも言って?」

「…わかりました」


まだどこか疑っているようなヴァン。

だけど渋々口を開いた。


「本当に何でも聞いてくれますか?」

「えぇ。約束だもの」

「本当に?」

「あ、あんまり無茶なことはやめてね?」


常識の範囲でお願いするわ。


「それは当たり前です!」

「なら良かった」


そう。

ヴァンはそういう人だった。

わざわざ言うことはなかったみたい。


「で、何?」

「あの…。お願いがあるんです」

「えぇ?」

「俺……」

「ん?」


「敬語、止めてもいいですか?」



ん?

敬語?