見えないお姫さま




「約束ですからね。何でも一つ俺の言うことを聞いてもらいますよ」


沈んだ気持ちになっている私に気付かないヴァンは、未だに楽しそう。

当然か。

私のこと見えてないんだもの。



「……どうかしました?」

「え?」


今まで笑顔だった顔を訝(イブカ)しげに、私の方に向ける。


「元気、ないんですか?あっ!そんなに嫌ですか!?俺の言うこと聞くの!」

「違うわ!待って!」


私の気持ちに気付いてくれたまではいいのだけれど、その理由が見当違いなことを言っている。

だから私は待ったをかけた。


「はい?」


すっとぼけた声を出すヴァンは鋭いんやら鈍いんやら。


「どうして私が元気がないと思ったの?貴方から私は見えていないでしょう?」

なのに何故わかったの?


「口数が少ないし、声に覇気もないかなぁと思いまして。やっぱり嫌ですか?」


違うと言ったのにまだわかってくれていないらしい。

それでも、声だけで私の異変に気付いてくれた。

私の口許が緩む。

今はヴァンに私が見えていなくて良かったと思う。