見えないお姫さま




「昨日からずっと何をしてもらおうか考えてたんですよねぇ」

と言うヴァンはなんだか楽しそう。


そんな姿が逆に怖い。

私、何をさせられるの……?


立ち上がったヴァンは土まみれの手でベンチを指差して、

「取り敢えず座りますか」

と言ってベンチに向かって歩き出す。



その背中に付いていくと、「突っ立ってるとどこにいるかいまいちわかんね」なんてヴァンの小さな呟きが聞こえた。


それは私はどう捉えたらいいの?

わ、悪口?


先にベンチに着いたヴァンは左半分を空けて座って、その空いている左側を見つめる。


「座りました?」

「……あ、えぇ」


はっとして私は急いでその空いている所に座った。


私の方に顔を向けるヴァンは至って普通。


ヴァンにしたらただ思ったことを口に出しただけなのかもしれない。

でもそれは本当に私のことがヴァンには見えてないんだってことを改めて思い知らされて悲しくなる。


そうか。

昨日お兄様が言っていたことはこういう感情のことか。