社長のご指名

幸せだった………。





人生で一番と言えるほどの幸せな時だった。





けど、幸せは長く続かない物だと身を持って知った時だった。





懐かしい………戻りたいけど戻りたくない。





未来を知ってるから、あんな思いをするのはもう十分。





「鳴海さん、すいませんでした。」

「え?」


「もうなんも聞きませんから、言いませんから……泣かないで下さい。」





泣かないで下さいって……。





ソッと自分の顔に触れると温かい物が流れていた。





嘘………私、泣いてる。





涙が流れてる……。





枯れるほど泣いたのに…まだ、泣けるんだね。





久しぶりに思い出したからかな?




ああ…、どうしよう――――…涙が止まらない。





「鳴海さん、見てませんから気の済むまで泣いて下さい。」





海堂社長に肩を寄せられ、暖かい温もりに触れてしまって余計に涙が止まらなかった。