ゆっくりと紗衣を抱き上げる。





「紗衣……紗衣…。」


「ふぇぇぇぇ。」


「紗衣……紗衣ちゃん…。」


「ふぇっ、えっ、えっ。」


「紗衣ちゃん…。」


「……あーっ。」





完全とはいかないけど、泣き止んだ紗衣はニコーって笑ってくれた。





嬉しくて、幸せで、泣きながら笑っていた。





「ほら、笑ったでしょ。紗衣は可愛いわね。」


「……うん。」





もっと“紗衣”って呼んであげればよかった。





もっといっぱい笑えばよかった。




紗衣がいらないなんて嘘。





私には紗衣しかいないのに……。




ちゃんと見なくてごめんね





叩いてごめんね





ほったらかしにしてごめんね





紗衣を思うと後悔だらけだった。




でも、これからはずっと紗衣に笑顔でいてもらいたい。





父親がいない事で寂しい思いなんかさせない。





紗衣には、ままがいるからね―――…。