「いらっしゃい」
今日も客足が耐えないおでん屋。
いつもの笑顔で出迎えてくれるのは茄子紺色の浴衣に白い割烹着が良く似合う女将。
結果はどうなったかって?
今のところ笹部は、藍子とも瑠璃ともデートはしていない。
まだまだ女の戦いは続きそうだ。
否、瑠璃の一人戦いが続くと言った方がよいか。
再び笹部はおでん屋に顔を出すようになった。
どうやらインフルエンザにかかっていた様だ。
「藍子さん!!」
「なんだよ。大きな声出したりして」
「この暖簾、一緒にかけませんか?」
「何言っているんだい、此処はアタイの城だよ。誰にもかけさせないよ」
「僕を此処で働かせてください」
「商社辞めるなんてもったいないだろ? それに給料を払えないよ」
彼は強い決意の表情で藍子の瞳を捕らえた。
「生活に基盤ができるまで商社は辞めません。此処で働けば少しでも長く藍子さんといられますよね」
「それじゃ、仕入れのいろはから教えるよ。根をあげるんじゃないよ」
「はい!!」
笹部が一人前になってこの暖簾の店主になる日は来るのか?
そして、二人に更なる想いは作られるのか。
ここは、皆で温かく見守ってあげようぞ。
- 藍暖簾 了 -
2010,01,20
花穏



