「生まれてからこの方、何不自由ない生活を送っていると、逆に退屈で死にそうだった。だから今ここで死んだとしても、悔いはなかったんだけどね」

自分の体の傷を見ながら、彼は淡々と話す。

けれどアタシだんだん怒りが募ってきた。

「…アンタさぁ、人生なめてるでしょう?」

「えっ?」

顔を上げた彼の顔を、アタシは思いっきり、

パンッ!

平手打ちした。

「そんなバカな坊ちゃん考えで、簡単に生き死に口にするなっ! 生きることの難しさも酸いも甘いも分かっていないクセに、『死んでもいい』なんて言うんじゃない!」

そして胸倉を掴み、顔を近付けた。

「アンタもアタシも生きるの! これからもずっと、生きていくんだから! そして自分で人生を楽しみなさいよ!」

「…別に生きてても楽しくないんだけどね」