「僕はサイラス国の第二王子、カール・サイラス」



宝石箱をひっくり返したようなキラキラ輝く笑みを向け、私の手に軽くキスを落とした。


クロエが懸念して私に近づいた時には、カールは軽く一礼し、私の横を通り過ぎていた。




(本物の王子様だわ……)



彼は暗い庭にキラキラと光を撒(ま)きながら広間へと戻っていく。


私はしばらくの間、夢でも見ているかのようにその後ろ姿を見つめながら立ち尽くしていた。