こんなにも大切で愛しい人、他にいない。


『…日向……きゃっ』


手を引っ張られて、その腕に吸い込まれる。


優しい温もりと、確かな感触。


「…何やねん、可愛い声も出せるやんけ」


そんな意地悪な言葉とは裏腹に、小さく震える彼の腕。


ぎゅっと力が入り、あたしをすっぽりと包みこむ。


安心できるその場所に、じわり、涙が滲んだ。


『…うるさいなぁ、アホ』


「……」


『…ほんまアホ』


「……」


『……日向?』


そう、何も言わなくなった彼の顔を見上げると、どうしようもなく涙が溢れた。


「―――今頃気づくとか、ほんまアホやな、俺」


『……っ…』


強く強く抱きしめられて、この感触を忘れないようにと切に願う。