『はぁはぁはぁっ……』


沈む夕日の中、息を上げながら懸命に走る。


いくら走っても苦しくなんてならなかったのに、何故か今は生きてるみたいに苦しい。


どうしてか飛ぶことも出来なくて、今まで幽霊として出来ていたことが何故かできなくて。


『……日向っ』


叫びながら、涙を堪えて走る。


今どこにいるかなんてわからない。


でも、何でだろう。あたしの中の何かがこっちだって、このまま走れって叫ぶんだ。





―――そして見つけた。


夕暮れの中、さらさら風になびく金髪。優しい背中。


あたしがこの世に戻って来た意味、今日でやっと分かった気がするよ。



ねぇ―――


『日向っ…』


呼ぶと、振り返る。


寂しそうな瞳を潤ませた、麗しのライオン。