さわさわと風が吹く。


水面が揺れ、流れていく川を見つめていた。


もう戻って来ないと分かっていても、どうしても期待してしまう。


どうしてもっと大事にしてこなかったんだろう。


当たり前の毎日が今ではこんなにも大事に感じる。


「―――陽菜」


呼ばれて振り返る。


夕日に照らされた彼がふわり、笑った。


もう遅いかもしれない。けど、まだあたしはここにいる。


『ごめん、呼び出して』


そう言うと彼はお決まりの笑顔を浮かべながら、


「だから、ごめんじゃなくてありがとうだろ」


そう、あたしの頭を撫でながら隣に腰かけた。


『…うん、ありがと』


「よくできました」