口の端に血が流れる。
それを親指で拭うと壱夜に胸倉を掴まれ、勢いよく壁に押し付けられた。
あまりの強さに一瞬息が出来なくなるも、
「まだ分かんねぇのか!」
「は?」
そうすぐに怒鳴られ、必死に言葉を返す。
初めてこんなにも感情をむき出しにした壱夜にびっくりするも、すぐにドロドロしたものが俺の心を埋め尽くす。
「別に俺じゃなくてもええやろ」
「まだ言ってんのかよ」
「俺じゃないとあかん理由がないやんけ」
「…陽菜が望んでる」
「けど、あいつは俺に言いたくないんやろ?」
「言いたくないんじゃなくて、言えねぇんだよ」
「…意味わからんねん」
「―――もう、時間がねぇんだよ!」
ひと際大きい壱夜の怒鳴り声が、俺の鼓膜を刺激した。

