「さあな」 日向の手を解き、ふっと笑う。 「けど少なくとも陽菜は、そんな女とは違うだろ」 「あぁ、わかってる。けど…」 「けど…?」 「最近、分からんねんあいつが」 ―――小さい頃は何でも分かったのになぁ そう、付け足すように小さな声で言った日向の言葉が、やけに切なく響いた。 もしかするともう、残されていないのかもしれない。 陽菜の出ていったドアを眺めながらそんな事を思った。 ―――もうすぐ、夏が終わる。