怒り、悲しみよりも情けなさに心が痛む。
ぐっと噛み締めるような陽菜の表情に、思わず抱きしめたくなった。
―――その瞬間、ドンっと胸に響いた衝撃。
ふっと視線を下ろすと、震える陽菜の拳が俺の胸を叩いていた。
驚いて咄嗟に腕を掴むと、陽菜の声が雨に混じって頼りなく耳に届く。
「…いや……嫌や」
「陽菜?」
「…なして」
「え?」
「離してっ!」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
戸惑う俺の胸を再びドンっと押しのけ立ち上がった陽菜に、びっくりして思考が付いていかない。
気がつくと陽菜は走り出していて、
「陽菜っ!」
必死でその名を呼ぶ。だけど、彼女に声は届かない。

