「てかさ、お前も知ってんの?」 フラフラと立ち上がりながら、稲葉が不気味に笑った。 「知ってるから俺を殴ってんやろ?」 そう言いながら俺の顔を覗きこむ。 「―――なぁ、知ってんやろ?」 「……」 「俺らがさ、あの子の事―――」 そこまで言って、ヤツの口から続きが発せられることはなかった。 代わりに聞こえてきたのは苦しそうな呻き声。 ビリビリと痺れる自分の拳に、ああ、やっぱりか…と思った。