「陽菜…?」
少し先で壱夜が呼んだような気がした。
けどその声さえも今のあたしに拾う余裕はない。
背筋が冷たくなって、まるであたしの周辺だけが世界から切り離されたようで…。
ぼやける視界の中、壱夜がこっちへと掛け寄って来る。
じわりとこみ上げてくる何かが鼻をツンと刺激した。
「…陽菜」
人の気配がして俯いていた顔を少し上げれば、同じ目線で優しく笑う壱夜の姿。
どうして壱夜はいつもこんなに優しく笑うんだろう。
あたしの目に溜まっていた涙をそっと親指で拭い…
「陽菜、少しだけ目つぶってて?」
ポンポンと頭を撫でて、綾子や稲葉達のもとへと向かっていく。

