「あ、携帯忘れた」


放課後の渡り廊下、ポケットに手を突っ込みながらだるそうに彼が呟いた。


「先行っといて」と付け足して、金色の髪を揺らし小走りに去っていく。


『先に行っといてやってー』


小さくなる日向を横目で追いながらくるりと壱夜の方に向き直ると、彼は大きいあくびで返事をする。


まるで猫みたいな姿が可愛くて、なんだか笑いが洩れた。


「何笑ってんの?」


『いや?別に……』


「笑ってんじゃん」


『笑ってへんよ』なんて言いながら、しっかりと口元の緩むあたし。


夕日の差し込む渡り廊下を二人そろって歩く。