…だけど。 なんにも分からないまま、日向に縋りつき鳴き続けるあたしに、壱夜は突然答えをくれた。 「疾風は…成仏したんだよ」 その声はしっかりと、けれど悲しく聞こえる声だった。 「この世に残っていた“大悟”っていうあいつの未練は、今日で断ち切られたんだ。だから幽霊でいる必要もなくなった」 『…え』 「そもそも、幽霊になってこの世に舞い戻るのは、強すぎる想いを残して死んだ奴だけだ」 俯いていた壱夜はそう言って顔を上げて、窓から見える夕焼け色の空を眺める。