静かな部屋。


聞こえるのは蝉の声だけ。


あたしは軽く洩れ続けるしゃっくりを押さえるようにして、体育座りした膝に顔を埋めていた。


「陽菜…」


耳元で日向の声がして、横に座っていた彼はあたしをそっと抱き寄せる。


西日が差し込んで、日向の金髪がオレンジ色に見えた。


『…っ…疾風が…』


小さく呟いた声が四角い部屋に広がり、それがやけに鮮明に聞こえる。


『……っ…』


胸が痛くて、言葉が出ない。


日向の腕の力が強まって、彼が微かに震えているのが分かった。